ドクター・ルースの生き方から学ぶ
“自分らしく生きる” こと
アメリカでいちばん有名な “お悩み相談” で、90歳の現役セックス・セラピスト、ドクター・ルースの波瀾万丈な人生を描いたドキュメンタリー映画『おしえて!ドクター・ルース』が、2019年8月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開!
【映画紹介】『おしえて!ドクター・ルース』2019年8月30日(金)全国公開!
それを記念して、20年前に単身ニューヨークに渡り、ライターとしてカルチャーから社会問題までを幅広く考察してきた佐久間裕美子さんを招いたトークイベントが行なわれました。
ベストセラーとなったエッセイ『ピンヒールははかない』(幻冬社)では、ニューヨークの女性たちの生き方を通じて、すべての女性が自分らしく自由に生きることへのエールを送り、近著『My Little New York Times』(NUMABOOKS)では、ドナルド・トランプの大統領就任をきっかけに激動するアメリカ、日本、世の中の流れへの思いを綴っています。
そんな佐久間さんが、困難な時代でも笑顔で人生を切り拓いてきたドクター・ルースの生き方から学ぶこと、また、現在のアメリカ、そして日本社会において「自分らしく生きる」ことについて、お話してくれました。
高齢の女性が現役で活躍!
女性のロールモデルはたくさんいる!
ドクター・ルースの存在は知っていましたし、テレビでも拝見していましたが、彼女の人生や、どうやって今にいたったかは知らなかった。ホロコーストをサバイブし、愛の伝道者になり、今の仕事を始めたのも50歳以上。インスピレーションを受けるポイントが満載で、途中泣きました。
セックスのことを大っぴらに話というのは、当時で考えるとかなりレアだったと思います。だから時代の空気感を変えて、同性愛者やいろいろなマイノリティに勇気を与えてきた人だと思います。
私もまさに自由に憧れてアメリカに行きました。一番大きいのは「自分自身でいていいよ」というメッセージを、とにかく生きているだけで強く感じるところ。とはいえ、ニューヨークでも住み始めた頃は男性同士や女性同士で手を繋ぐことなどはウエストヴィレッジなど一部の地域に限られたものでしたが、どんどん「自分自身でいいんだよ」という方向になり、「理想像というものに無理してならなくていいんだよ」ということは教えられると思う。
それから、歳をとることに対してあまり恐れがない気もします。歳をとることがネガティブなものではないということは常に感じています。とくに、ドクター・ルースが52歳であれだけのスターになったということも勇気付けられますよね。
ニューヨーク発で活躍しているおばあちゃんということでいえば、アイリス・アプフェル(映画『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』)や、2019年に日本でもドキュメンタリー映画『RBG 最強の85才』が公開されたルース・ベイダー・ギンズバーグなど、高齢の女性が現役で活躍するということに対しても開かれているということです。
それは、トランプ時代になってさらに加速した感があります。フェミニズムの加速もありますが、私たちが今得ている権利を切り拓いてきた、そういった高齢の人たちが映画やドキュメンタリーのサブジェクトとしてどんどん注目されるようになったんですよね。今の時代だからこそ、彼女たちのメッセージが心に響くというところはあるんだと思います。
長い間、女性のロールモデルがあまりいないと思っていましたが、実は本当にたくさんいるんだなと最近思います。ジェーン・フォンダ(『Jane Fonda In Five Acts』)や、フェミニストの元祖 グロリア・スタイナムのドキュメンタリー(『My Life on the Road』)も観ましたが、それぞれの人生が壮絶であり、でも笑いやユーモアに溢れていて、怖い時代だからって怖がるだけでなくていいんだという、ひとりの人間として勇気を得ました。
ノーマルなんてない!
誰しも自分自身でいい
ドクター・ルースの「ノーマルなんてない」という言葉は心に響きました。もっと “それぞれがいいと思う生き方をすればいいんだよ” という世の中になっていくといいですね。ドクター・ルースみたいな人に「ノーマルなんてない、誰しも自分自身でいいんだ」と言ってもらえるのは心強いです。
日本は “和” を重んじすぎるあまり、個性や、自分と違う人に寛容でないところがありがちだと思います。例えば夫婦別姓の問題も、「自分は必要ないからみんな必要ない」という人がいますが、もっと、いろんな人にいろんな選択肢があって選べるようにしていった方が、国民一人ひとりの幸せに近づくと思うんです。そんなに難しいことではありません。だから、この映画を観た人には、「普通なんてない」「多様性」ということや、「自分と違う志向を持っている人に優しくなれる」ということを考えてほしいと思います。
それに、日本も変わりつつある。20〜30代の女性とフェミニズムの話をしたりするのですが、どんどんみんなオープンになっているなと思う。私の世代は活発に議論するのが苦手な方だったと思うのですが、そういう壁がなくなってきた気がします。自己表現に対する恐れみたいなものは柔らかくなってきていると思うので、ワクワクしますね。
【映画紹介】『おしえて!ドクター・ルース』2019年8月30日(金)全国公開!
佐久間裕美子
ニューヨーク在住歴20年。政治経済や社会問題から、ファッション、ライフスタイルまで幅広いトピックスについて執筆。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、「ピンヒールははかない」(幻冬社)、「My Little New York Times」(NUMABOOKS)、「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)。翻訳書に「テロリストの息子」(朝日出版社)。
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