2020年4月3日(金)全国公開!
ステップ
2020年/日本/カラー
原作:重松清「ステップ」(中公文庫)
監督・脚本・編集:飯塚健
出演:山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、広末涼子、余貴美子、國村隼 ほか
配給:エイベックス・ピクチャーズ
©2020映画『ステップ』製作委員会
鑑賞日:2020年3月2日(月)
TEXT:キッズイベント 高木秀明
今、この瞬間だけを想えば
“幸せ” は常にそばにある
観た後は、伴侶に感謝、家族に感謝、当たり前と思っていることは、実はかけがえのないことなんだと改めて気付かせてくれる。そして、束の間かもしれないけれど、いつもより優しくなれそうな気がする。
やらなきゃいけないことは多くて忙しいし、先のことは不安だらけ。しかし大切な人がそばにいるという、今、この瞬間だけを想えば、意外と簡単に幸せは実感できる。たとえ後からドッと不安が押し寄せてくることがわかっていても、幸せが常に身近にあると知ることは、人生をより意味のあるものにしてくれる。
僕と娘の10年間
天国の妻との10年間
原作は「とんび」「流星ワゴン」など、大切なものを失った家族が再生していく姿を書き続けている小説家・重松清さんの「ステップ」(2009年刊)。
結婚3年目、30歳という若さで突然妻を亡くした健一が、2歳半になる娘の子育てと仕事の両立をはじめる。それは何もかも予定外の、うまくいかないことだらけの毎日。亡き妻を想い続け、さまざまな壁にぶつかりながらも一歩一歩ゆっくりと “家族” への階段を上ってゆく。残された者たちの、新たな一歩を踏み出す物語。
物語は娘の保育園から小学校卒業までの10年間。子育て中の方なら、それぞれの時期を自分の思い出と重ねあわせ、嬉しくなったり、切なくなったりしてしまう。卒園や卒業、子どもたちがひとつの節目を迎えるたびに、一山超えた感慨と成長を喜ばしく思う反面、その時期が終わってしまったという寂しさもある。子どもたちと向きあった時間が長ければ長いほど、その想いは大きい。
子どもを育てるのは、つくづく大変だと思う。自分の時間はなくなるし、お金はかかる、文句も言われる、しかもけっこう長い。自らの選択とはいえ、なんでこんな面倒なことをと思うことも多々ある。でも、苦労をするぶん喜びも大きく、人生を豊かにしてくれるもののひとつなのかもしれない。
さまざまな経験を通して
人は強く、優しくなっていく
シングルファーザーとして奮闘する健一には山田孝之さん。亡き妻への想い、子育てと仕事の両立、新しい出会い、義父母との関係など、実年齢と重なる等身大の男性の苦悩、葛藤、そして成長を落ち着いた演技で魅せてくれる。
そんな健一を支えるのが、國村隼さん演じる義父の明。娘亡き後も健一を息子として優しく、ときに厳しく接する。孫に対しても人としてのあるべき姿を見せ、そんな國村さんの声が、想いが、たまらなく心に響く。世代によっては、健一よりも明の視点で物語を観るかもしれない。
義母の美千子を余貴美子さん、義理の兄を角田晃広さん(東京03)、保育士のケロ先生を伊藤沙莉さん、行きつけのカフェ店員の成瀬舞を川栄李奈さん、そして健一の同僚の斎藤奈々恵を広末涼子さん。健一を支える誰もが優しく、心に何らかの傷を抱えている。傷のない人なんていない、一人では生きていけないことにも改めて気がつく。
家の玄関を出て、足下に電車の通る陸橋を渡り坂を登る。ベビーカーだったのが自らの足で歩き、そしてランドセル姿になる。同じ道、同じ部屋、日々の繰り返しの中には成長に伴う変化が見てとれる。変わっていく部分と、変わらないところ。妻は、お母さんは亡くなってしまったけれど、いなくなったわけではない。
いろいろなことがあるけれど
明日もがんばろう!
子どものいる方は親の目線で、孫のいる方は義父母の視点から、誰もがさまざまな視点から観られる。また年齢、環境、状況の変化にともない、共感する人物も変わってくるだろう。
そして幸せって、実はもう手に入れているんだ、ということに気がつかせてくれるとともに、それを大切にしよう、明日もがんばろうと思わせてくれる。
映画は小学校卒業まで。これから先も、さまざまな出来事が待ち受けている。この親子が、それをどのように乗り終えていくのか、その成長も観てみたいと思った。
from キッズイベント
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