これからのデジタル社会に欠かせない
読み、書き、“プログラミング”
ー「チャギントンプログラミング」を使ってみて、いかがでしたか?
子どもたちのエントリーレベルのプログラミング環境としては、とってもよくできていると思います。プログラムはロジック(論理、法則、ルール)の積み重ねです。一見するとシンプルなロジックですが、それを積み重ねることによって複雑な動きが生まれるということを理解してもらうには、とても良い設計がなされていますね。
プログラミングを学ぶにはいろいろなアプローチがあると思いますが、「チャギントンプログラミング」は一歩一歩のステップをしっかりと確認しつつ、その結果起こることを楽しい形で経験できる、大変良い入口だと感じています。
ー 一つ一つの動きを設定していくことが “プログラミング的思考” や “論理的思考” を養うことにつながるのでしょうか?
そうですね。動きの制御が、どのようなロジックでできているのかを理解することが、プログラミングの基本中の基本です。
そして動きの背後に “何かがある” という感覚を、幼い頃から脳の中に身につけられるのは大事なことだと思います。デジタルネイティブという言葉がありますが、“プログラミングネイティブ” のような子どもたちになる一つのきっかけになればいいなと思います。
子どもたちがこれからのデジタル社会の主役となるうえで、プログラミングを通じた “プログラミング的思考” と “論理的思考” の養成は欠かせません。これらは複雑な物事の本質を見極め、試行錯誤をしながら単純な動作やルールの組み合わせとして整理し、問題を解決する普遍的な思考法です。
親御さんは自分たちの子どもが将来活躍して、自分でちゃんと生活できて、幸せになれるスキル、知識、経験を身につけてあげたいと思っていると思いますが、それが、このプログラミングを学ぶことに集約されていると思います。
ー 私も「チャギントンプログラミング」を使ってみました。「チャガーをうごかそう」では正解がいくつもあることや、楽しくトライ&エラーできること、だんだんと難しくなる課題をクリアする喜びなどが感じられると思いました。
今の子どもたちは圧倒的に多くの動画やゲームを小さな頃から楽しんで育っていますが、キャラクターを自分が思った通りに動かすということが、どういう理屈や仕組み(ロジック)になっているのかを理解する第一歩になって、おそらく子どもたちの中で “感動” があると思います。こういうシンプルなロジックを繰り返すことで、複雑な動きをつくり出しているんだと。そして子どもたちが受け身で接している動画やゲームを、今度はつくる側にまわるという第一歩を踏み出すきっかけにもなるかなと思います。
子どもたちはなぞなぞやクイズが大好きですが、クイズに強い人には秘密があるんです。それは、クイズをつくるスキルがすごく高いこと。実は世の中にクイズってそんなにたくさんないんですよ。だから、自分でクイズをつくらないと、問題がなくなってしまう。そしてクイズをつくることでクイズに強くなっていく。だからこの「チャギントンプログラミング」も、与えられた問題を解くことはもちろん楽しいんですが、つくる方にも興味が出ると2倍楽しめますね。
訓練しないと身につかない
子どもたちの脳へ素敵な贈り物を
ー “プログラミング的思考” や “論理的思考” というものは、生まれたときからある程度備わっている能力でしょうか?
脳科学ではっきりわかっていて、脳は直感は得意なんです。「これが好き」「あれが楽しい」というのは直感です。でも、プログラミングで使われている順序立てて物事を考えていくような論理的な思考や、推理する能力というのは、訓練しないと身につかないものなんです。
ー 茂木先生が子どもの頃には今のようなデジタル環境はなかったと思いますが、先生ご自身の “プログラミング的思考” “論理的思考” は、どのように養われたのでしょうか?
僕の世代だと高校生くらいのときに『日経サイエンス』などの雑誌で、数学者 マーティン・ガードナーの「数学ゲーム」や、先日亡くなった数学者 ジョン・ホートン・コンウェイの「ライフゲーム」などに出会ったのがきっかけです。
「ライフゲーム」は生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを再現したシミュレーションゲームで、単純なルールで模様の変化を楽しむことができました。当時はコンピュータが使えなかったので、どんな模様になるか、方眼用紙を使って試していましたね。
だからそれに比べると、今の子どもたちはなんと恵まれているんだろうと。僕が今、子どもで「チャギントンプログラミング」があったら、夢中でやっていると思いますね。
論理的な思考というのは訓練しないと身につかないので、子どもの頃からやっておくことは、とてもとても大事です。
ー しかも訓練によくある辛いという感覚ではなく、楽しみながら、というのも重要ですね。
脳は楽しみながら学んでいるときが一番多くの学びを得られます。これからプログラミングは絶対に必要なスキルになりますが、何よりも子どもたちが、それを辛いとか苦しいと思わず、楽しい、おもしろいと感じながら学べる、それだけでも、子どもたちの脳にとってはものすごい贈り物になると思います。
プログラミングが楽しいと思える子どもにするためにも、「チャギントンプログラミング」というアプリの意味があるのかなと思います。苦手意識を持ってしまうともったいないので、入口は大事ですからね。
このアプリは絶対に楽しいので、最初の一歩としてプログラミングに興味を持ってもらえたら、そこから先は子どもたちが自由に探ったり学んだりしていくと思います。
子どもたちのITリテラシーの向上
親御さんも一緒に楽しもう!
ー 茂木先生のtwitterをよく読んでいます。SNSでの誹謗中傷があとをたちませんが、プログラミングを学ぶこと(プログラミング的思考・論理的思考)は、子どもたちの人格や品性の教育にもつながりますか?
つながると思いますね。「プロジェクト型学習」ってありますよね? 一つのゴールを決めて、そこに向けてがんばるというもので、苦しいことや辛いことがあっても、自ら考え、工夫して粘り強くチャレンジし、乗り越えるという「GRIT(グリット)」という概念です。
「GRIT」はアンジェラ・ダックワースという心理学者が提唱し、日本語では「やりぬく力」と訳されていますが、これは生きていくうえで非常に重要だということが最近の研究でもわかってきました。「GRIT」に関係する脳の回路も前頭葉を中心に見えてきているんですが、プログラミング教育は「やりぬく力」も養うとともに、それは情操教育というか人格教育でもあると思っています。
「チャギントンプログラミング」で、うまくいかないものを工夫してできるようになったという体験をすることで、学校の教科もそうだし、人生のさまざまな困難も “やりぬく” 人格をつくっていくことになると思います。
さらに、他人のことを尊敬できる子どもになるんじゃないかなと思いますね。簡単なプログラムでも、実はつくるのは大変です。私たちの生活を守ったり、便利にしたり、楽しませてくれる、世の中で動いているプログラムをつくるのは本当に大変なんだと実感し、人の苦労や気持ちがわかるようになるんじゃないかなと思いますね。
ー 茂木先生もSNSでの発言に批判や誹謗中傷を受けることがあると思いますが、そういうときの心の対処法はどうされていますか?
日々炎上ですからね(笑)。でも子どもたちにとっても、そういうときの心構えは本当に大事なことだと思います。
文字だけを見ちゃうと辛くなったりすると思うんだけど、その後ろにいる人のことを考えたら、だいたい大丈夫なんじゃないかなと思います。なんでこういう方々はこういうことを言うんだろうと、考える。
もちろん、自分で気がつかなかった素晴らしいことを言ってくださる方もいます。でもその一方で誹謗中傷する人もいます。でも実際には、そういう人って寂しい人が多いと思います。以前、実際に誹謗中傷してくる人と話をしたら、とても寂しさを感じている人だったんですよね。子どもにそれを求めるのは難しいと思いますが、やはり文字面の後ろにいる人のことを想像したら、世の中そんなに悪い人はいないんじゃないかなと思いますね。
SNSでの子どもたちのいじめも話題になることがあり「ITって怖いな」と思う親御さんもいらっしゃると思うけど、そこは親御さんが、「そういうことを書いてくる子もいるけど、こういう気持ちがあるんじゃないかな」と、「本当は寂しいんじゃないの」「あなたのことが羨ましいんじゃないの」「友だちになりたいんじゃないの」と、広い目で言葉の後ろにいる人の本当の気持ちを教えてあげることが、子どもにとっては救いになることもあるんじゃないかと思いますね。
ー 今回の新型コロナウィルス感染症への対応で、日本のデジタル環境や考え方が、欧米、中国、韓国に比べてもだいぶ遅れていることが露呈しました。子どもたちが「チャギントンプログラミング」などでプログラミングを学ぶことで、将来、追いつくことは可能ですか?
そうなってほしいですね。日本の子どもたちの力はこれからますます伸びていくと僕は信じています。これまでは伸ばす機会があまりなかった。でもそれは、大人たちの責任ですよね。
大人たちが子どものITリテラシーを上げる工夫をどんどんしていかないと、日本がこれからどうやって国を発展させていくかを考えたときに、道が見えなくなってしまいます。お子さんの幸せ、そして日本のITを担う人材を育てるという視点からも、ぜひ親御さんも一緒に「チャギントンプログラミング」を楽しんでいただけたらなと思います。
ー 親はどのように関わるといいですか?
親御さんも「チャギントンプログラミング」を全部やってみるべきだと思いますね。子どもの方がすぐに上手になって、子どもに教えられるでしょうけど。
おそらく今の子どもたちの親御さん世代では、工学部や数理系の学部に行っていない限り、このようなプログラミングの思想に触れている方はあまりいらっしゃらないと思います。親御さんにとっても初めての体験かもしれないし、祖父母の方にとってはアンチエイジングや認知症予防の効果も期待できると思います。ぜひご家族で、みんなで楽しんでほしいですね。みんなで楽しむと、家族の絆、コミュニケーションなど、いろいろな良いことが生まれてくると思います。
人生100年時代を生き抜くのに必要なもの
プログラミングは “好奇心” を持つ大きな入口
ー「チャギントンプログラミング」で遊ぶ子どもたちが「人生100年時代」と言われる長い期間、なんとかたくましく、幸せに生きていくのに必要なものは何だと思いますか?
“好奇心” につきると思いますね。正直、これからの時代がどうなるかは誰にも予想できません。人間が車を運転しない自動運転の社会が来るのはわかるけど、AI(人工知能)がどのような形で私たちの生活に入ってくるのかなどは、まだ誰にもわかりません。
でも、どんな時代になっても、“好奇心” を持って新しいことを学ぶ喜びを知っている子どもは大丈夫なんです。好奇心のある人は一生学び続けますし、一生気持ちが若いし、100年後でも世の中についていける人になるんじゃないかと思います。
ー そのために親ができることは、子どもたちにいろいろなものを見せたり、体験させることでしょうか?
自然に触れたり、音楽を聴いたり演奏したり、スポーツを見たりやったり、絵を観たり描いたり、見ること体験することのすべてが好奇心を育むきっかけになると思います。そしてその中でも、プログラミングは時代の好奇心の最先端で、いろいろなことに好奇心を持つ、もっとも大きな入口でもあると思います。
お台場にチームラボのデジタルアートミュージアム「チームラボボーダレス」という施設があります。とてもおもしろいのですが、あれはどのようにプログラミングしているんだろうというのは、プログラミング経験のまったくない子とある子では、見え方や考える深さがまったく異なりますよね。
ー プログラミングを知らないと、ただ “楽しい” という受け身の感想しか持たないかもしれませんが、プログラミングを多少でも知っていると「これはどうやっているんだろう?」と、興味を持って難しさを推し量ることができますね。
プログラミングを学ぶことで、世の中を深く見る望遠鏡というか、拡大鏡のようなものを手に入れることができるのかなと思います。
だからこの「チャギントンプログラミング」を、プログラミングの世界に入る好奇心の入口として使ってもらえたら嬉しいですね。
ー 日本はまだまだ学歴社会だと感じることがあります。勉強やテストが苦手な子はどうしたらいいですか?
アメリカのハーバード大学は、学力で入学を決めているわけではないんですね。成績はほとんど関係なく、その子がどのような学びをしてきたかを面接で見て入学を決めています。日本のようにペーパーテストの点数と偏差値で合否が決まっている方が、実は世界的に見ればかなり特殊です。
日本はなんでそうかというと、教育というものが “ポジション取り” のためだからなんですよね。いい大学だといい企業に行けるという社会的なルートみたいなものがあり、その子が何ができるかではなく、そういうポジションを取ったということなんです。そのポジションをめざして、みんなペーパーテストをしてきた。でもその結果何が起きたかというと、ペーパーテストで測れる能力と、時代の求める能力のミスマッチが非常に大きくなってきたのが、今の日本という国だと思うんです。
勉強が苦手、ペーパーテストが苦手という子どもは、確かに今までの日本だと苦労したかもしれませんが、これからはおそらくアメリカ型というか、より実質的な能力が求められる国にどんどん変わっていくんじゃないかと思います。アメリカだと中学しか出ていないけどプログラミングの天才で大活躍している人はざらにいるし、Googleも3割の社員は大学に行っていないと言われています。だから日本もそうなっていくんじゃないですかね。というか、なっていかないと、日本は滅びると思います。
たとえば「チャギントンプログラミング」が楽しくて学校に行かないという子がいたとしても、それはそれでいいと思うんです。その代わり、小学校から学校には行かずずっとプログラミングをやっていて、こういうスキルがありますという子が、東京大学や京都大学から「うちに来る?」と言われるような世の中にならないと、日本のこれからの発展は難しい。そうなってほしいなという想いも込めて、子どのたちの個性を大切にしていきたいなと、心から思いますね。
「チャギントンプログラミング」とは
「チャギントンプログラミング」は、拡張現実(AR)上の「 “チャギントン” のキャラクターを動かしてゴールまで進めるプログラミング」と、「動物を文章でプログラミングする」という2種類のコンテンツがあり、ゲーム感覚で楽しくプログラミング的思考・論理的思考を学ぶことができます。簡単なレベルは未就学児から、難しいレベルは大人まで挑戦できる内容となっています。
兄弟や両親、祖父母と一緒に楽しく学べるように、ひとつのアプリに4人のユーザーまで登録可能です。またアプリ上の表記や音声は日本語と英語の2ヵ国語に対応しています。
プログラミングカリキュラムの監修者は、早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長の鷲崎弘宜教授。
アプリは今後、ユーザーが自由にステージをつくったり(ステージ作成機能)、ユーザーの「成長ログ」が記録できるようになるなど、機能のアップデートを予定しています(開発中)。
【一般ユーザー向け】
・定額制:月額350円 ※4ユーザーまで登録可能
・日本語・英語2ヵ国語対応
※スクール向け教材は、2020年5月よりサービスを開始。
【推奨機器】スマートフォン/タブレットPC
【対応OS】iOS (11.0以上)/Android(5.0以上)/Windows10(OSビルド10240.0以上)※Windowsはスクール向けのみ
【対応言語】日本語/英語
【対象年齢】3才以上
【開発】フジテレビジョン/九州コーユー
「チャギントン」とは
「チャギントン」というさまざまな列車(チャガー)たちが暮らす街を舞台に、主人公の「ウィルソン」「ココ」「ブルースター」という見習い列車3人組がともに日々成長し、互いの絆を深めていく心温まる物語。毎週日曜あさ6時15分よりフジテレビほかで放送中!
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