※新型コロナウイルス感染症拡大による政府の緊急事態宣言発令を受け、『恐竜ライブ ディノサファリ2021 特別編』は2021年4月28日(水)以降の公演が中止となりました。
恐竜が歩きまわったらすごいよね!
ー 2016年11月10日(木)の新型「ティラノサウルス3号」の発表会で初めてDINO-A LIVEを見て衝撃を受けました。当時「10年かけてコツコツと、リアルさを追求するために改良に改良を重ねて」とお話されていましたが、“恐竜をつくろう” と思ったきっかけを教えてください。
最初は博物館にたくさんの人に来てもらいたくて、研究員の方と一緒に、どんなモノがあれば子どもたちがキッズエリアを楽しみながら、自然科学を学べるエデュテイメントの場にできるかなどを話し合い、資料を見ながらリアルな造形物をつくっていました。
今のような恐竜をつくる前は、博物館の壁画や造形、背景画など、絵を描いたりモノをつくったり、そういう仕事をしていたんです。手描きや手づくりですよね、僕らの場合は。でもそれがコンピュータを使った出力になり、はっきり言えば僕らの技術を必要とするニーズがだんだんと狭まっているときでもあり、“何か新しいことにチャレンジしたいな” と思っていました。
【体験レポート】恐竜ライブ DINO SAFARI(ディノサファリ)“特別編” 稽古場潜入レポート!動画も!
“博物館にたくさんの人に来てほしい” “自分たちの技術を活かした新しいチャレンジ”、そんなことを考えていたら、単刀直入に、ド直球で、博物館にあるあの恐竜が歩きまわったらすごいよね! 人がいっぱい来るよね! って(笑)。
どこの博物館にも骨格標本やロボット標本などを含め、恐竜の展示物はたくさんあって人気もあるんです。でも映画のように実際に歩きまわる恐竜はいなかった。それがあればたくさんの人が来て、自然科学などに興味を持ってもらえるきっかけになる、それがスタートでした。
知識を得ることで、世界の見え方が変わる
ー 「ディノサファリ」は、ただ単にリアルな恐竜が出てきて “すごい!” というだけではなく、恐竜に対する知識を公演中に参加型のクイズで得られたり、そういうものが随所に盛り込まれていて、確かにエデュテイメントだと感じます。
大事なのは体験と知識なんです。知識を持って野山に行くと、本当に野山の魅力が何倍にもなるんです。ただ眺めるよりも、それがどんな植物で、どういうところに生えていて、どういう日当たりを好んで、どういう葉っぱの形をしていて、なかには夜になるとしぼんでしまう花があったり、陽が当たらないと咲かない花があったり、そういうことをたくさん知っていると、見え方が全然変わってきます。野山がものすごい情報量があるものに見えるようになるんです。
「雑草が生えている」という知識しかなくて野山を見るのと、たくさんの知識があって野山を感じるのとでは、前者では同じ野山でもそれが持つ宝物のような本当の豊かさを理解できません。「ディノサファリ」という恐竜ライブも、恐竜の知識を得て、恐竜を生き物として見ていただくことで、より豊かな体験になると思っています。
ー 造形のお仕事をされていたので、観察すること、細部まで細かく見ることの大切さを人一倍実感されていると感じます。
「“たんぽぽ” をつくってください」と言われても、それが何のたんぽぽで、どのあたりに分布していて、どんな性質を持っていてなど、そういうところまで調べないと本当のたんぽぽの姿は見えてこないんです。しっかりとした背景を持ったモノづくりをしたいんですよね。
たとえばライオンは1日のうち15時間くらい寝ていて、お腹が空いていなければ、ほとんど襲ってきません。どう猛な生き物と思われていますが、そう考えると襲われる確率は相当低いですよね。恐竜も生き物で、怪獣でもバケモノでもありません。生き物としての生態があり、知れば知るほどおもしろく、ものごとを豊かに感じることができるようになります。だから細かなところまで観察し、恐竜を生き物として認識してもらえるようにリアルにつくろうと努めていますし、そういうところに興味がありますね。
恐竜とはとても不思議な関係
だから凹んでも辞めなかった
ー 最初は借金をしたり、大変な思いをされて今まで続けてこられたと思います。途中でもう無理だなとか、辞めちゃおうかなと考えたことはありますか?
確かにいろんな困難がありました。欧米に「ウォーキング with ダイナソー」というショーがあって、それに類似しているんじゃないかと思ったときには「もう辞めなきゃいけないのかな」と覚悟しましたし、凹んだこともいっぱいありました。でも不思議なんですが、恐竜が動いているところを目の当たりにすると「辞めたい」って気持ちがなくなるんですよね。
今日も稽古を見ていたんですが、やっぱり嬉しいんですよね。だから恐竜を生き物としてしっかりつくりたいんです。生き物として見えるようにつくると、こんなことを言うのは変ですが、恐竜たちが勝手にストーリーをつくってどんどん先を歩き、僕らはそれに引っ張られている感じがするんです。とても不思議な関係で、だから辞めなかったのかな、と思います。
いま生きている生物や研究結果から動きを想像
エンターテインメントとしても楽しめるものに
ー 生きている恐竜の姿を見た人はいませんが、先ほどの稽古で、ステゴサウルスがアロサウルスを前にしたときに、闘牛が相手を威嚇する地面を蹴るような “前掻き” のような仕草をしていたり、ユタラプトルの求愛のシーンを描いていたり、恐竜の動きはどこから導き出しているのでしょうか?
いま生きている生き物がもとになっていますが、誰も見たことはないし、生態も本当のところはわかりませんよね。だけど、いろいろな研究から、鳥と似たような行動をしていたのではないかとか、想像や類推から、明らかな間違えはダメですが、想像の範囲をものすごく膨らませていますね。
鳥は求愛のダンスを踊る種もいるので、恐竜も鳥に近い、もしくは鳥自身とも言えるので、だとしたら鳥の習性のようなものがあったのではないか、卵で生まれてくるので抱卵していたのではないか、それを裏付ける化石も発見されているので、ユタラプトルもそうしていたのではないかと。でもまったく異なる説もありますよ。ラプトル類は群れによる行動はしていなかったのではないかとか、でもそういう生態だったのではないかという想像から、エンターテインメントとして見ていただく形をとってますね。
ー トリケラトプスは顔の部分が人間の爪の成分でもあるケラチンで覆われていたということがわかって、造形でもそれを反映していたり、常に新しい情報で恐竜たちをアップデートしていますね。
あのトリケラトプスはかなりアップデートしています。背中にトゲが生えていたり、ウロコの印象化石から同じようなウロコにしたり、お腹の下はワニのウロコに似ていたということがわかってきて、それも反映しています。
ー 恐竜は毎年新しい発見があるので、それをすぐに反映するのは大変ですね。
あんまりすぐではないですよ(笑)。ユタラプトルに羽毛を生やすのは、僕らの世代は少し抵抗があってなかなか踏ん切りがつかなかったですね。でも今は羽毛があると考えるのが当たり前なので、そうしましたけどね。
恐竜のテーマパーク計画
技術的な課題もいっぱい
ー「ディノサファリ」のテーマパークを計画されていたと思いますが、現在はどのような状況でしょうか。
いまはこういう状況なのでストップしていますが、つくりたいと思っています。恐竜の頭数も今は24頭、今年もっと増える予定で、ラインアップがだいぶ揃ってきたので割と実現可能な段階まで来ています。でもより具体化していくのはこれからですね。
ー テーマパークとは形が違いますが、2020年末に新宿住友ビルの三角広場で開催した「ディノアライブの恐竜たち展」では、恐竜ライブショーに登場する18頭の恐竜を一同に展示していて、とても壮観で見応えがありました。同じ恐竜の過去につくったものも展示していて、どのようにアップデートしていったか、進化の過程を比較して見られたのも楽しかったです。
ものづくりという観点もお見せした方がいいと思って展示しました。
ー 常に恐竜をアップデートしていますが、技術的な課題はありますか? 何ができるようになると、もっとリアルに、金丸社長も満足する恐竜になるでしょうか?
技術的な課題はいっぱいありますね。なかなか自分たちの思ったようにはつくれていないんですよね。ちょっとずつしか改善することができなくて、今日も別のところでは恐竜の製作を行なっています。
たとえば目の構造、まばたきはもっと突き詰める必要があります。恐竜は基本的には鳥がモデルなので、眼球の中に骨があって目はギョロギョロとは動かないんです。でもまばたきは上下だけではなく横もあるとか、いろいろと言われています。それを実現するには技術的に難しくてけっこう大変な作業になるんですが、1年後、2年後には再現されていくと思います。少しずつしかアップデートできないんですよね。でもつくるのは楽しい作業ですよ。
自分の好奇心に正直に
ここにいること自体が奇跡的な素晴らしさ
ー 恐竜やものづくりが好きで、将来、株式会社ON-ARTで働きたい、こんな恐竜をつくりたい、という夢を持つ子どもたちも多いと思います。小学生の子どもたちは、何を勉強し、身につければ、将来一緒に恐竜をつくることができますか?
僕らは骨や骨格から生き物をデザインして、どんなふうに生きていたのかを再現しています。それには自分の好奇心に正直に、好きだと思ったらいろいろと自分で調べてみるという姿勢が必要です。そうすることで、より深い世界が見えてきます。
恐竜を通して何を表現したいかと言えば、生き物のすごさや素晴らしさ、存在していることのすごさです。ひるがえって見ると、自分も生き物じゃないですか。“私” がここにいること自体が奇跡的な素晴らしさであり、まわりの自然も奇跡的にものすごく豊かなものなんです。一生かけて調べても、ほんの一部しかわからないくらい奥行きのある世界に私たちは生きているということを改めて実感し、ここにいることの幸せを感じます。人間の世界の中だけだと、その幅は狭いですよね。だから自分の好奇心に正直に、見たり調べたり、没頭することで道が開けるかもしれません。
哺乳類と恐竜とはもともとの設計思想が異なる
桁外れ、常識はずれのスーパーボディ
ー 多くのお子さんが親御さんと一緒に今回のショーを見ると思います。見た後に「すごかった」とか「恐竜に会いたいね」とか、そういう会話になると思いますが、そのときに親がちょっと自慢できるような恐竜のうんちくがあったら、教えていただけますか。
僕たちは哺乳類ですよね。恐竜は鳥類や爬虫類で、やっぱり体のつくりがまったく違うんですよ。全然違う生き物なんだよ、というところですかね。ちょっと難しいかな。
恐竜と哺乳類は設計自体が違うと感じますね。哺乳類は頭脳を発達させるために、人間が頂点なのかな、そいういう形で設計されていますが、恐竜は高性能な体が設計思想で、最後は空を飛びます。それってすごくないですか?
ー あの大きさの恐竜が空を飛ぶのは信じられないです。公演でもありましたが、恐竜の卵はそんなに大きくありませんが、それから恐竜によっては35メートルまで大きくなるわけで、どうしてそんなことになるのか理解ができません。
あのね、爆発、生命爆発ですね(笑)。爆発的に成長するんです。もうめちゃくちゃですよね。アルゼンチノサウルスは20年くらいですかね、それで35メートルになります。とんでもない量の食料が必要ですが、それが1,000頭くらいの群でいて、そんな食料があったのか、桁外れで常識では考えられないですよね。
鳥はまったく地上に降りずに4,000キロメートルをヒマラヤを越えて飛ぶことができる種がいますが、その体力って異常ですよ。これは肺の能力が哺乳類とはまったく違うんですね。疲れを知らないんです。ユタラプトルも疲れ知らずで何十キロも追いかけてきます。逃げられないですよ。そういう違いがありますね。
ー 他の生き物と比べると、人間ってなんて貧弱なんだろうって感じますね。
そう。とにかくすべてのエネルギーを脳の進化に費やしたんでしょうね。一方、恐竜は徹底的にスーパーボディをつくる設計なんですよ。
ー ステゴサウルスは初めて見ましたが、体高があって迫力ありました。
あれはメスの設定なので、もうちょっとしたらオスが出てきます。メスより大きくて迫力ありますよ。トリケラトプスもいまのはメスなので、こちらもオスが出てきます。今年の予定です。ツノの大きさは個体差がかなりあるようなのですが、僕らは大きめに解釈していて、まるで戦車ですね。見ものですよ(笑)。
ー トリケラトプスも体の半分近くが頭ですから、常識では考えられない不思議な生き物ですよね。
ティラノサウルスとライバル関係にあって、負けないようにどちらもドンドン大きくなっていったようですね。ティラノサウルスから防御するためにツノも発達したようですが、この2頭の恐竜は他の恐竜と比べても武装のあり方とか噛む力など、ちょっと特別です。
恐竜ライブショーで世界中をまわる
この恐竜体験はみんなの財産
ー 最後に、金丸社長の今後の目標、夢を教えてください。
「シルク・ドゥ・ソレイユ」のように世界をまわりたいですね。「人が精一杯つくった生き物による、生き物のためのライブショー」です。見た人に “すごい!” って感動を与えるとともに、生き物っておもしろそうだなと、まわりの風景がいつもとちょっと違って見えるような、世界中の人たちにそう実感してもらえるようなライブショーを展開したいですね。
あといまはSDGsと言われていますが、できれば開発途上国などもまわりたいですね。教育の機会が先進国だけに偏っているのはどうなんだろうって最近すごく思うようになりました。でもまずはビジネスとして成功しないと何もできないので、成功させたら、チャンスに恵まれない人たちにも見てもらえるようにしていきたいですね。この恐竜体験は、たくさんの人の財産だと思っています。
【イベント情報】2021年4月24日(土)〜5月9日(日)渋谷ヒカリエで開催!「DINO SAFARI(ディノサファリ)“特別編”」
【体験レポート】恐竜ライブ DINO SAFARI(ディノサファリ)“特別編” 稽古場潜入レポート!動画も!
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