ライブペインティングは “神事”
その土地や集まった人たちのエネルギーで描く
ー 絵に打ち込む姿と、さまざまな色が交じり合い浮き上がってくる絵には時間を忘れて見入ってしまいました。「ライブペインティングはパフォーマンスではなく “神事”」とおっしゃっていましたが、前日から準備はされるのでしょうか?
毎朝お祈りはしていますが、ライプペインティングをするということで、気持ちを新たにお祈りや瞑想の時間をとりました。富岡八幡宮は由緒正しい神社で、このような場所で絵を描かせていただけるのは本当にありがたく、失礼があってはいけない、そういった心構えをしました。
ー ライプペインティングで心がけているのは自我は出さず、その代わりに、その土地や集まった人たちのエネルギーを受けて描くということですが、今日のこの土地、集まった方のエネルギーはどのようなものでしたか?
今日は太陽からも力強いエネルギーを感じましたし、お詣りにいらっしゃる方々の足音やお祈りの際の音、そういうものを敏感に感じていました。
また深川という場所は人情味あふれる、人々の生活を感じられる場所で、“粋” も感じられました。それらすべてを取り込みながら描きました。
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ー 描いているときは没頭しつつも、外の音も聞こえているんですね。
自我をなくすことによって、いろいろなものを感じやすくなります。人の歩いている音とか、今日は七五三の小さいお子さんもいて、とても可愛かったです。そこからその土地のエネルギーを感じることにつながります。鳥の鳴き声や羽ばたき、今日はとてもいろいろなことを感じられました。
ー 火の鳥を描きましたね。
絵を描く前に瞑想やマントラを唱えていると、いろいろなものが見えてくるんです。最初はもやっとしているんですが、だんだん形になってきて、最初に赤い線で結界、エネルギーのラインを描いて、そこから火の鳥が羽ばたく様子が見えたので、それを描きました。
コロナ禍で過去を振り返る機会を得る
改めて芸術は “魂を癒す薬” だと実感
ー 最近は少し落ち着いてきましたが、新型コロナウイルス感染症によって制限のある生活を強いられてきました。コロナの前と後で、考えが変わったり、作品に何か影響はありましたか?
コロナの前は海外も含めて出かけてばかり、毎日前進する日々で、今考えると本当に忙しすぎでした。しかしコロナによって落ち着いて過去の現象や出会った人、海外へ行く意味とか、それらを今一度思い出し、抽象的に自分の中に落とし込んで描くようになりました。過去を振り返ることによって前に進める、勇気をもらえる。そういった作業をするようになりましたね。作品も背景を抽象的に表現するようになりました。
ー コロナ禍で家にいることが増え、アートや音楽などの芸術に癒されたり励まされたりしている方は多いと思います。改めてアートの持つ力が感じられた期間だと思うのですが、アーティストの方はどのように思い、制作をされていましたか?
アートは、私の中では “魂を癒す薬” だと思って描かせていただいているので、その意味を改めて、とても深く考えさせられました。今でも探し続けている答えのひとつなので、コロナに教えてもらったかなと思っています。
ー 神獣の絵をよく描かれます。神獣は “正しい方向に導いてくれる存在” で、今こそ多くの方に必要とされていると感じます。小松さんが幼い頃ニホンオオカミに導かれたように、どうすれば子どもはもちろん我々も神獣に導いてもらうことができますか?
“無邪気” であることだと思います。自我や欲望が多すぎると邪気まみれになってしまい、するとそういう存在は近づいて来てくれません。だから毎朝瞑想して邪気を落とす作業をし、リセットすることを心がけています。瞑想は非常に大切なのかなと思っています。
絵を描くことが好きな子どもたちへ
自分らしさ、生き様が大事
ー 絵を描くことが好きな子どもはたくさんいますが、それで生活できるようになるのは大変です。どうすれば小松さんのようになれるか、アドバイスをいただけますか?
私のようにはなれません。私じゃないから(笑)。でも、芸術という分野に限らずですが、その人の生き方の中で、その人自身を磨いていくことが大切で、誰かをめざすこともいいとは思いますが、やはり自分らしさや自分の輝きとか、その人の生き様が大事だと思うんですよね。だからしっかりと生きていけば評価されると思います。あとはいい仲間をつくっていくことは大切ですね。
ー 小松さんのお母さんは、小松さんが小さいときによく博物館や美術館に連れて行ってくれたそうですね。そういう体験は重要でしたか?
美術館という体験があったのは本当によかったと思います。また、母は神社やお寺、教会など、宗教的、人種的なものに差別を持たずにいろいろなことを感じて、良いところを見つけていこうという考えで、自分の中で壁をつくらない教育をしてもらったのは、とてもありがたかったですね。
ー 小松さんが絵を描くことに対して、お母さんはどのようにされていましたか?
母は「絵は習うものではない」という考えでした。その代わりコピー用紙を200枚くらいの束で渡されて「好きなだけ描きなさい」と。すぐに200枚を使っちゃうと、また200枚くれて、また描いてと、その繰り返しでしたね。それくらい好きなように描かせてもらっていました。
ー やはり小さい頃から絵を描くのは好きだったんですね。
そうですね。絵を描くのが好きで、その環境は整えてくれました。小さい頃は動物が大好きだったので、飼っていた動物、動物園や図鑑の動物をよく描いていました。
でも、絵を描いているだけだと人間の縦社会で生きていけないので、薙刀をやらされていました。礼儀作法や目上の方を敬う気持ち、そういったものを身につけるようにと、中学生までやっていました。
ー 今後の目標は?
人類はいずれコロナという壁を乗り越え、以前のように世界がつながる日がくると思っています。そのときに、今、学んでいることを発揮した絵をしっかり描いて、芸術は人を癒す薬だと思っているので、その役割をまっとうする生き方をしていかないといけないと思っています。
お出かけする感覚で楽しんで
お気に入りの絵の発見には心が躍動
ー 最後に「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」の見どころ、見に来る方にメッセージをお願いします。
魂を込めてつくったアートは人の気持ちを救ったり、暖かくしてくれます。昨年の「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」では、多くの方が描いた可愛らしいものから勇気溢れるもの、夢のあるもの、いろいろな色使いで描かれた絵がたくさん展示されていて非常に勉強になりましたし、笑顔にしていただきました。
美術鑑賞は難しいものではなく楽しいものだと思っています。その空間と一体化しながら、自分の魂と心を癒しながら一歩一歩進んでいくところです。町全体にアートが展示されているので、気軽に、お出かけする感覚で見に来ていただければと思います。
そこでお気に入りの絵を発見するのも楽しく、心が躍動します。昨年おもしろい作品を見つけたので、今年もとても楽しみにしています。
【レポート】2021年10月14日(木)「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」キックオフイベントが開催! 現代アーティスト 小松美羽さんが特大絵馬にライブペインティング!
小松美羽
1984年、長野県坂城町生まれ。2004年、女子美術大学短期大学部卒業。現在同大学の特別招聘教授。東京藝術大学の非常勤講師。20歳の時の銅版画作品「四十九日」が賞賛されプロの道へ。国内のみならず、台北、香港、上海、シンガポール、ヴェネチア、ニューヨーク、等で展覧会を開催して精力的に活動している。
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