これも愛、あれも愛、どこが愛?
名画に宿るさまざまな「愛」の表現に迫る!
ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された絵画を通して、名画に宿るさまざまな「愛」の表現に迫る『ルーヴル美術館展 愛を描く』が、2023年3月1日(水)から国立新美術館で開催! 前日に内覧会が開かれ、案内役の満島ひかりさんも登場、トークセッションが行われました。
人間の根源的かつ複雑な感情「愛」は、古より西洋美術の本質的なテーマのひとつとなっています。『ルーヴル美術館展 愛を描く』では、18世紀フランス絵画の至宝とも言うべきジャン=オノレ・フラゴナールの《かんぬき》、フランス新古典主義の傑作であるフランソワ・ジェラールの《アモルとプシュケ》をはじめ、16世紀から19世紀半ばまでの西洋各国の主要画家による珠玉の「愛」の絵画73点を一堂に展示。西洋画家が「愛」という複雑な概念をどのように見つめ、描いてきたか、名画を通して考察する試みです。
身近にある愛に気づき
日常にたくさんの愛を描いてほしい
同展の案内役の満島ひかりさんは、「恋愛、家族愛はもちろん、おどろおどろしかったり怖かったり、人が描かれていないものもあったり、『これも愛って言うんだ』という作品もあって、作者や絵画の舞台の歴史や背景を紐解きながら作品を見ていると、こんなところにこんなヒントが隠されているから “愛” についての作品なんだと、知れば知るほど鑑賞している時間が長くなります。たくさんの時代や感情を追体験できて、とても贅沢な時間を過ごせると思います」と、明日からの開催が待ちきれない様子。
さらに、「 “ルーブル × 愛” というのがすごくいいなと思っています。たくさんの人がこの2〜3年でいろいろな環境の変化があったり、目まぐるしく世界が変わっていく中で、改めて見直したことや愛を感じること、触れられないことへの寂しさ、触れられるものへの愛おしさを、日々、感じていると思います。2023年3月からは良い星まわりになると聞いていて(笑)、その最初の1日に展覧会が開催します。ぜひ足を運んで、みなさんの日常にたくさんの愛を描いてほしいと思います」と、改めて身近にある “愛” に気がつくとともに、愛を分かち合う大切さを思っていただければ、としました。
18世紀フランス絵画の至宝
フラゴナールの名作が26年ぶりに来日!
展示の目玉のひとつフラゴナールの《かんぬき》について国立新美術館 主任研究員の宮島綾子さんは、「今回の展覧会を開催するにあたり、ぜひ出品してほしいというリストの一番最初に入れていたのが《かんぬき》でした」と、同展での展示を熱望していたそう。
「フラゴナールが生きた18世紀フランスでは、神話や宗教画に加え、人々の日常を描いた絵画が描かれるようになります。中でも上流階級の男女の優雅な恋の駆け引きは、好んで描かれ流行しました。その極みかつ最後のきらめきと言えるのが《かんぬき》です。フランス革命(1789年〜1795年)の10年前となる1777年〜1778年という道徳感が劇的に変化する時代に描かれ、この作品後は男女の恋愛模様、エロティックな作品は非難されるようになります。その時代を表わす象徴的な作品です」と宮島さん。
《かんぬき》は1997年以来26年ぶりに来日。その間、この作品の描かれた文化的、社会的環境についての研究も進み、97年頃にはわかっていなかったことも見えてきたそう。18世紀のフランスには一部の上流階級の知的エリートの間で「リベルディナージュ」という、自由奔放に性的な快楽を追求することを肯定する思想が流行。現代の我々からするとポルノグラフィックに見えるかもしれませんが、その裏には、人々のモラルを支配してきたキリスト教の権威に対しての反発、批判精神もあったのでは、と言われています。
「リベルディナージュという思想を知らずに多くの方がこの絵画を見ると思いますが、複雑で曖昧な中でいろいろな繊細な判断をしていくのが性愛の一番の特徴です。一瞬を切り取った画面の中の女性の表情は、うっとりしているのか、同意しているのか、それとも抵抗しているのか、甘いゲームなのか、それによって失われるものへの警告なのか、その曖昧さというものを、豊かに味わってほしいと思います」
時代や文化、社会によりさまざまに変化する「愛」。ギリシア・ローマ神話では、キューピッドが放つ矢により愛が誕生する瞬間から、神が気に入った女性を誘拐する掠奪愛も描かれています。キリスト教ではイエスの自己犠牲による神と人間に対する愛、聖母マリアが幼子イエスに寄せる愛など、これも「愛」なんだと、時代や文化の違いで驚くものから、時代や場所、人種を超えて共通する普遍的な「愛」まで、さまざまな「愛」を、素晴らしい名画を通して体感することができます。
『ルーヴル美術館展 愛を描く』は、2023年6月12日(月)まで国立新美術館で開催。
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