
大阪・関西万博の大人気パビリオン
「いのちの未来」がアップデートして
この夏、MoN Takanawaで開催!
2025年に開催された大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンとして人気を博した石黒浩教授プロデュース「いのちの未来」をアップデートした「いのちの未来+(プラス)」が、「MoN Takanawa: The Museum of Narratives(モン タカナワ: ザ ミュージアム オブ ナラティブズ)」で2026年7月25日(土)〜9月25日(金)に開催!
開催に先立ち2026年6月12日(金)に「いのちの未来+(プラス)」の記者発表が行われ、ロボット工学・アンドロイド研究の第一人者である石黒浩教授(大阪大学教授/ATRいのちの未来研究所客員所長)が登壇、万博の成果や「いのちの未来+」について概要を説明されました。そしてそのあと少しお時間をいただき、お話をお伺いすることができました!
記者発表での石黒教授のお話や質疑応答については、動画もあるので、ぜひレポートをご覧ください!
「いのちの未来+」が
いのちや未来について
親子で話しあうきっかけに
― 大阪・関西万博の「いのちの未来」を体験できなかったたくさんの子どもたちも、今回の「いのちの未来+」を体験すると思いますが、この展示が子どもたちにとってどのようなものになってほしいですか?
やっぱり親子で話しあうきっかけになってほしいですね。お母さんやお父さんの世代と子ども世代では、AIやアンドロイドに対する考え方がだいぶ異なります。子どもはもう “AIネイティブ” になりかけているので、子どもが親を教育する時代に、ぼちぼちなってきているんじゃないかと思っています。
― 子どもが親を教える、ですか?
子どもはもう「AIって当たり前でしょ」「スマホと話すのは当たり前じゃん」という感覚で未来を考えています。AIの利用を迷っていたり、「AIって怖いんだぞ」と牽制することの多い親御さんは、少し考えを改めた方がいいかもしれない。今回の展示を通してAIやアンドロイドの未来を見て、親が子どもの考えから学ぶ、そういう体験をしてほしいですね。
夕日を見て美しいと感じる
アンドロイドやロボットに
欠けている機能
― 今では子どもたちもスマートフォンなどで生成AIと会話をすることは日常だと思いますが、肉体を持つアンドロイドと目をあわせて話すことは、画面の中だけの生成AIと比べ、子どもたちにどんな異なる感情を芽生えさせるでしょうか?
アンドロイド※は現実世界に存在しているので、感情的なものや意図が伝わりやすいのは間違いありません。ただ、アンドロイドやロボット※が生成AIに対して圧倒的な差を持つのは “触覚” なんですよ。抱きしめたり、抱きしめられたり。スマホは抱きしめてくれないじゃないですか。だからアンドロイドやロボットが皮膚感覚を持つようになると、それらは極めて人間的になります。そしておそらくあと5年くらいで、今の人型ロボットとは感覚的に異なるレベルのアンドロイドやロボットになります。
※アンドロイド:ロボットの中でも、特に「見た目が人間にそっくり」につくられたもの。石黒教授は自分のコピー(ジェミノイド)など、人間と見分けがつかないレベルのクオリティを持つものを「アンドロイド」と呼んでいます。
※ロボット:自律的に動く機械の総称で、必ずしも人の形をしているとは限らない。画面の中の生成AIに対して、現実の世界に存在するものとして「ロボット」と呼んでいます。
― 皮膚感覚以外でアンドロイドやロボットに足りないものはありますか?
“感情” ですね。今のアンドロイドやロボットは目も耳もあるし、技術的には匂いも味も感じることもできるでしょう。そういう個々の要素はすでにあって、正しく理解することはできるんです。でも、そこから感情を生み出す機能が再現できていません。たとえば夕日を見て感動するといった、一番人間らしい “現象的意識” です。それができたら、ものすごく人間っぽくなります。
自分のコピーアンドロイドは
独自の経験で成長する
それは自分か、それとも否か?
― 先ほどの記者発表で、先生は「アンドロイドが自分とは違う経験を積むことで、別の人格になっていく」とお話しされていました。コピーとしてつくられたはずのアンドロイドが、だんだん「自分」ではなくなっていくということでしょうか?
そもそも昨日の私と今日の私も別人格なんですよ。昨日とは違う経験を今日積んでいるわけですから、厳密には同じ人間ではありません。それと同じで、私をモデルにしたアンドロイド(ジェミノイド)も、私とは違う場所で違う経験を積めば、だんだんと別の「私」になっていくのは当然のことです。
最初は記憶や知識もそっくり同じ状態からスタートしますが、異なる経験が増えるにつれて、兄弟のような関係になっていきます。現在はまだ、あらゆる感覚や意識を統合した「完全人格※」まで再現できるかはわかりませんが、すでに経験値によって話す内容は変わってきています。
たとえば大阪・関西万博で私のアンドロイドは多くの来場者やVIPと会話をしてきました。私からは独立した経験をどんどん積み上げることでオリジナルの経験を持って話ができるアンドロイドになっています。私が話せないような流暢な英語で話すこともありますよ。
※完全人格:石黒教授の語る「完全人格」とは、単に人間のように受け答えができるだけでなく、視覚、聴覚、そして特に「触覚(皮膚感覚)」などの五感がひとつに集まり、人間と同じように世界を感じられる状態。さらに、夕日を見て「きれい」と心から感動するような、人間特有の「現象的意識」までが再現されてはじめて、プログラムではない「人格」としての完成形に近づくと考えています。
― そうなると、先生とアンドロイドの間で「意見の食い違い」が出てくることもあるのでしょうか?
ありますね。今はまだ私のこれまでの考えをベースに話していますが、アンドロイドが独自に人の話を聞いて何かを学んだときに、意見が少しずつ変わっていく可能性は現時点でも十分にあります。
― 先生はアンドロイドによってご自身の存在を継続できるとお話しされていますが、そのアンドロイドは生身の先生の “意識” そのものを引き継ぐわけではありません。ベースは先生であっても、固有の経験を経て成長した “別人格の兄弟” のような存在です。それでも、まわりがそのアンドロイドを「石黒先生」と認識し、社会に受け入れられるなら、先生ご自身の意識の連続性はなくても、それは紛れもなく「先生」が生き続けているということになるのでしょうか?
その通りです。そもそも人間がしがみついている「自分という意識」なんて、実はあやふやな幻想に過ぎません。同様に命や心にも明確な定義はなく、あるのは「社会の中で認められれば人権がもらえる」という客観的な事実だけです。
たとえ生身の私が死んだ後でも、私の意図や能力を継いだアンドロイドが日々の経験を積み上げ、誰かと対話し、まわりから「先生」として認められているなら、それは社会的には紛れもなく「私」という存在が継続しているということになります。
これまでは心臓や脳が止まることが「死」でしたが、これからはテクノロジーによって、AIやアンドロイドとして自分の存在を残すことができるようになる。そうなると、死の定義も変わってきますね。

アバターを使った
“ごっこ遊び” で
自分の可能性を広げる
― 先生が研究されている「サイバネティック・アバター(分身)」の技術は、子どもたちの学びや生活をどう変えるでしょうか? 自分の別人格として何かを学んだり経験したりすることは、今後、増えていくでしょうか?
10数年前にオーストリアのリンツ市を拠点とする世界的なメディアアート機関「アルスエレクトロニカ」に僕のアンドロイドを置いて、誰でも遠隔操作できる仕組みにしたことがあります。ある中学生の女の子がとても “先生っぽく” 僕のアンドロイドを操作してみんなに指示を出しはじめると、先生ごっこが完璧にできたんですよね。
これはその女の子が、先生の立場に立ったらどう振る舞うか、どんな意見を言うか、どうやってみんなを主導すべきかを考えたからでしょうね。その子だけ急に成長したようでした。アバターを使えば、人は肉体や年齢の制限を超えて、複数の人生(役割)を同時に生きられるようになります。それが他者への想像力や、自分の可能性を広げることにつながるんです。
看護師さんやお医者さん、患者さんの立場をアバターで経験する。こういうロールプレイは、人の気持ちを考えるという、子どもにとってとても大事な経験になります。ときどき大人も赤ちゃんになって、赤ちゃんの気持ちを考えてみるのもいいですよ。これは冗談ですけどね(笑)。
子どもの感性をヒントに
親子で一緒にアップデート!
お父さんはアンドロイドになるの?
― 子どもたちが五感を通して感じる「いのち」とは何でしょうか。
「いのち」に明確な定義はないんですよ。誰も定義していない。心も同じで、人によって意味は異なります。でも、社会の中で認められれば「人権」はもらえるわけです。
わかっていないのに「いのち」という言葉を使うからややこしいんです。でも、それを考えるのは大事なことで、だからこそ親子で「自分たちはどう考えるか」を話しあうことで、自分たちの倫理観や社会のルールをつくっていく一歩になります。
そして、お母さんやお父さんが考える「いのち」と、子どもの考える「いのち」では、子どもの方が幅が広くなっている可能性がある。だから「親よ、子どもに学べ」と言いたいんです。
大人は小さい頃の疑問に蓋をします。それは限られた世界で効率よく生きるためには必要なことですが、一方で世界を狭めています。技術やAIが進めば、興味を広げたままでも物事を理解し、扱えるようになります。
― 今、多くの親が「子どもにプログラミングを学ばせるべきか」「スマホやAIとどう付き合わせるべきか」と悩んでいます。石黒先生からアドバイスをいただけますか?
そもそも教育ってあまり効果がないので、子どもがやりたいことをやればいいと思います(笑)。AIが進化する未来では、自分の興味を広げたままでも技術がそれをサポートし、仕事として成立させてくれるようになると思います。
― 最後に、「いのちの未来+」を親子で見たあと、親子でどんな会話をしてほしいですか?
大阪・関西万博で展示を見たお子さんが、帰りの電車で「お父さんはアンドロイドになるの? ならないの?」とか「おばあちゃんはどっちを選んだと思う?」と熱心に聞いていたそうですが、そういう議論を親子でしてほしいですね。
正解のない問いについて話すことで、子どもは自ら考えるきっかけになり、親は子どもの自由な発想から学ぶことができます。大体、親の方が頭が硬いので(笑)、子どもの柔軟な受容性を見て、親が自分の心を入れ替える。そんな「親子逆転」のきっかけになる会話をしてほしいと思います。
「いのちの未来+(プラス)」は2026年7月25日(土)〜9月25日(金)まで「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」で開催!

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